今まで五月雨式にエスプレッソマシン”RANCILIO SILVIA”の改造記事を載せてきました。
そこで改めて「何をしたか」ではなく「どうなっているか」を観点に、一旦まとめておこうかと思います。
たとえオーナーが変っても、このページを読めばわかるように。
1.改造概要
- 抽出温度を安定させるための細かなボイラー加熱
- ドライスチームのためのスチーム温度キープ
を目的に、PIDコントローラによる温度制御に変更しました。
純正から追加したもの
- PID 温度コントローラ
- RTD(温度センサ)
- ソリッドステートリレー x2
取り付けのための切削、穴あけなどの加工はなし。
純正から取り外したもの
・抽出100℃サーミスタ
・スチーム140℃サーミスタ
2.配線図
純正状態
Silviaは純正状態で以下の回路となっています(取扱説明書より)。
これに実際使われている内部配線の色で線を引くとこうなります。
白抜けしているのは白いケーブルです。
もうちょっと表現を考えれば良かったか。
改造後
これに「改造によって追加したもの」を追記しました。
T1,T2のサーミスタを取り外し、2つのSSRにコントローラ、RTD温度センサを追加しています。
左のSSRがスチーム用で、右が抽出用SSR。
配線の解説
コントローラの結線について記載します。
- 端子No.1-2はAC電源。
- 端子No.4-5はスチーム用SSRの制御端子。指定値より高いか|低いかの単純制御のみができます。
No.4からAC電源のL側が入り、No.4とNo.5の間にある内部リレーを通ります。その後No.5からスチーム用SSRに入り、抽出用SSRの二次側端子でAC電源のN側と繋がるループを形成します。 - 端子No.6-8はRTD専用端子。
- 端子No.9-10は抽出用SSRの制御端子。PIDによる細かい指定値制御が可能。DC出力で電圧は低め。
線材について記載します。
- AWG22 150℃耐熱電材:コントローラの電源、及びSSRの1次側(INPUT)に使用。何れも20mA前後の電流を想定。
- AWG14 200℃耐熱電材:SSRの2次側(LOAD)に使用。1000W=8.3A+マージンを想定しましたが、200V15Aくらいまで使えます。
- 分岐平型端子:電源スイッチ上部でACの分岐に使用。
- 平型端子:サーミスタを取り外したコネクタとの接続に使用。エーモンの250型端子。
- U字端子:SSRの2次側に使用。
はんだ付けは無く、全て圧着及びネジ止めです。
配線写真
背面カバーと水タンクカバーを外した裏面から撮影しました。
左下が抽出用SSR(DC)。線が細い手前が1次側=コントロール用。
右中の張り付いているのがスチーム用SSR(ACモデル)。右が1次側。
スチーム用SSRの2次側=負荷側の黒は抽出用SSRと並列接続されています(ケーブル削減のため)。
スチーム用SSRの1次側もケーブル削減のため抽出用SSRの1次側からAC100Vを得ています。
以下はボイラー部分と接続を拡大したところ。
ボイラー上部に2個あった純正のサーミスタは取り外しました。
RTDを大きなワッシャーで挟み込み固定しています。白い液体は熱伝導グリスです。
黄色い熱収縮チューブを巻かれ、コネクタとつながっているのがSSRからの配線。
熱害を避けるため、ボイラーから離れた所で結束してあります。
最後はコントローラ側の写真です。
両面テープでカップウォーマー横に固定してあります。
ケーブルはグループヘッド横の隙間からまとめて出し、コルゲートチューブを被せました。
蒸気と汚れからケーブルを保護する目的です。
コントローラケース裏面のアースはボイラーと接続されています。
3.温度遷移
純正状態と改造後、2つの温度変化を示すグラフを書きました。
手書きのため、あくまで概要として参照してください。
純正:スチーム温度
購入時はサーミスタにより単純に制御されています。
途中AC100V→120Vの昇圧トランスも購入したため、その違いも記します。青が100V直結、赤が120V昇圧の結果。
開始点は室温と同じ25℃。
そこからスチームスイッチをONにしてから電源を入れると、A=140℃、B=147℃、C=126~132℃となりました。
120V昇圧の時、加熱が切れるまで4:30。切れた後も上昇を続け、最高点Bに達する時間Dは5:00。
30秒ほどで冷め、保温のための再加熱が行われます。それが完了するEは7:20(141℃)。
100Vの時は、加熱が切れるまでが7:20、最高点に達する時間Fは8:10。
両方とも以降は繰り返しで変化はありません。
改造後:抽出温度
PIDコントローラが温度制御を行うと以下の様に動きます。
同じく25℃でスタートし、A’=105℃と設定するとB’=116℃、C’=102℃となりました。
A’に近づくと加熱はゆるやかに減速し、やがてA’を超えた後、緩やかにB’まで到達します。
A’の到達にかかる時間は3:45、最高点B’に達する時間D’は4:20。
その後冷却と再加熱を繰り返しますが、次第に目標値A’に対する温度の揺らぎは減ります。
だいたい3回過ぎればA’の5℃以内をキープするかな?という印象。
ただし抽出などによりお湯の出入りがあれば、また温度は揺れ動きます。
改造後:スチーム温度
スチームは130℃を下回ったら加熱ON、132℃を超えたら加熱OFFという単純制御を行います。
この結果、最低129.8℃・最高136.4℃の間を往復します(自然冷却の場合)。
純正のサーミスタよりも細かく、一定&指定の温度でヒータをOFF/ONすることができます。
制御パラメータ
コントローラの制御パラメータは以下を設定。あとはデフォルト。
Sv | 105 |
P | 2.0 |
I | 60 |
D | 15 |
AL1 | 132 |
AH1 | 130 |
あとがき
これで一通り、Silviaにまつわる改造を書き記せたと思います。
過不足を見つけたら随時修正していくつもり。
Silviaにはおおむね満足しているけれど、水タンクの残量が見えないのがかすかな不便。
満杯に入れると水の廃棄が増える。減らすと肝心なときにボイラーが空焚きになる。
これをどうするか。