買い集めた部品をテストし、いよいよRancilio SilviaにPID制御機構として組み込みます。
これまでの調査などを載せた以下の記事も合わせて御覧ください。
- (調査編)Rancilio Silviaの電気的動作と市販PID Kitの動きを把握する | 徒労日記
- (テスト編)Aliexpressで買った組み込み用1/32DIN PID Controller をテストします。 | 徒労日記
工作
カバーの取り外し
海外の動画などを参考に、カバーを取り外します。
ネジはほぼP2のプラスドライバーでした。
天板は4本のタッピングねじのみ。
ネジ穴の位置がいい加減で、クリップナットで無理矢理合わせてる感があります。
ボイラー上部に2つ、側面に1つのサーミスタが見えます。
左の赤い点付きが抽出用の110℃サーミスタ。右がスチーム用140℃、側面が異常保護用165℃。
次に両サイド、黒いフレームに止まる上部左右のネジを2本緩めます。
そして給水タンクを外し、底部中央の穴に見えるネジをロングノーズドライバーで外します。
あとは背面のコの字のカバーを開きながら外します。
Silvia V6は改良が進み、ボイラーに保温材が巻かれています。
ポンプの上にチラ見しているのが3方向バルブ。ちょうどグループヘッドの裏にあります。
正面のRANCILIOロゴ裏にはスペースに余裕があり、ここにPIDコントローラを埋め込む猛者もいました。
Rancilio Silvia PID : 4 Steps (with Pictures) – Instructables
当然もとには戻りません。
SSRの取り付け
タンク下のスペースにSSRを固定します。
排水?のいくつか空いた穴に大きなワッシャーを使ってSSRを片どめします。
一応シリコン(サーマル)グリスを裏に塗りました。
でもSSRは大して発熱しなかったため、逆にフレームの熱でSSRを温めてしまうかも。
写真の奥側がAC120V。
電流が大きいため、大事を取ってU字端子で成端。途中買い出しに走ったけど、安心感はやっぱりあります。
手前はDC8V 30mAなので22AWGの細い耐熱電線で配線。
サーミスタを外してRTDをつける
写真下部がボイラー。
迷ったけど、元の抽出用110℃サーミスタ(右側)は取り外しました。
そのネジ穴を使い、また大きなワッシャーでRTDを挟み込む形で固定。
RTDにはシリコングリスをべっとり。熱が伝わればいいのよ!(垂れないように、余分なのは拭きました)
平型端子はちゃんとしたものを
写真の左上では抽出用サーミスタから取り外したコネクタ2本を、SSRから伸ばしたAC120V側2本と接続しています。
ここで使う平型端子6.3mmオスで問題発生。
Aliexpressで買ったものは板厚が薄く、Silviaのメスコネクタに入れたらスカスカ。引っ張ると簡単に取れてしまいます。
ここが接触不良となった場合、抵抗値が高まり発熱→発火に至ります。この部分が焦げてる海外の写真も多く、不安がよぎります。
おそらくAmazonで売ってる大量セットの安物はみんな駄目。
キラキラしていない、にび色の錫メッキされた無酸素銅の製品が必要でしょう。
ということで国産の板厚のある製品を買いに走りました。平型は意外と取り扱いが無いので注意しないと。
また被覆の耐熱温度も気になります。
溶けないようボイラーの真上を避け、なるべく外側で結束。結束バンドも100均のではなくインシュロックにしました(といってもMSではなく耐熱85℃のもの)。
コントローラの電源とアースを接続
PIDコントローラの電源となるAC120Vとアースをとります。
電源スイッチの上部2つのコネクタを外して分岐平型端子を割り込ませます。
こちらはしっかりとした板厚で問題なく使えました。
コントローラは最大2W(20mA以下)らしいので、細い線材で配線。
シャーシアースはボイラー横から分けました。
コントローラを結線
最後にコントローラを結線して完成。
右上から反時計回りに、
- AC:120V
- AC:120V
- GND
- 空き
- 空き
- RTD:Neutral
- RTD:Neutral
- RTD:Hot
- SSR:ー
- SSR:+
緑がGNDじゃなかったりDC+が黒だったりしているのは線材の在庫により。
通電テスト
結線を終え、まずはカバーを外した状態で通電してテスト。
コントローラのOUT LEDに合わせ、Silviaの加熱ランプが点滅するようになりました。
1時間ほど通電し、SSRは室温、ボイラーに近いコネクタも天板開放で34℃ほど。
なんとなく温度制御も働いているようだし、問題なさそうです。
カバーを元に戻し、いよいよ本番。
実際に使ってみる
天板付近の臭いを注意深く嗅ぎながら、しばらく使ってみました。
SVは105℃にセットしました。
コールドスタートすると最初の温度上昇で一気に116.6℃までヒート。
この状態で抽出すると水蒸気を多く含むためジュワジュワいいます。
上がりすぎ。
その後、低温~高温の間を往復しながら安定していき、3往復くらいで105℃+-1.5に収まるようになりました。
自動チューニング機能
PIDパラメータを自動的に最適化する機能を使ってみます。
コールドスタート時に”>”を長押しすると、OUT LEDが点滅を始めAutoTuning開始。
30分ほどの放置でLEDが消えました。
結果、パラメータは前回のオススメ数値から以下のように変化。
- P:2 → 3.7
- I:60 → 243
- D :15 → 60
すべての数値がより緩やかな方に振られました。
特にIなんかはかなり増えたため、SVに到達するまでの時間が不安です。とりあえず使ってみるけれど。
標準のスチーム制御
なおスチームをONにするとPID制御から外れます。
135~136℃で加熱はOFFになっても、ボイラー温度は147℃まで上昇。
ボイラーが冷え再び 128~134℃に落ちるとONされます。以後繰り返し。
再加熱にバラツキはあるものの、要は水蒸気になっていればいいので抽出ほどシビアではないという印象です。
楽しい試行錯誤のはじまり
温度制御はまだ安定しないけど、待望の一杯淹れて味わいました。
満足。
今回かかった費用はAliexpressからの通販で4,366円。
近場で買った端子類が約300円。それに手持ちのグリス、線材など少々。
これに立派なケースをつけるならトータル5,500円くらいになりそうです。
Aluminium Enclosure just for XMT 7100 Intelligent PID Temperature controller
今回は精密な温度計をつけた、とも言えます。
なので狙った温度で抽出開始する事は簡単。
あとはグルーブヘッドから95℃のお湯を出にはボイラーを何度にする必要があるか。
それがしばらくの課題になるでしょう。