エスプレッソマシンの温度制御を実装するため、Aliexpressでパーツを買い集めました。
あらかた届いたので、素組してテストしてみます。
パーツチェック
PID Controller
Universal 1/32 DIN Panel XMT 7100 Series Intelligent PID Temperature controller AC/DC85-260V
購入時送料無料で¥ 2,036
AuberのPID KITに激似な汎用PID Controller。
製造元がカスタムしてOEMもするらしいので、ディーラーにより色々なバージョンがあります。Auberでの価格は$36.98(Universal 1/32 DIN PID Temperature Controller )
ただしこの製品も、Auberの単品販売品も、PID Kitに使われているコントローラとは別物というのが自分の予想。
KITではスチームも含めた2値の温度制御=2個のSSR制御の他、抽出を自動化するリレーのOFF/ON信号があります。
この製品はどう眺めてもそんなこと出来なそう。Kitはカスタムファームではないかと思います。
とりあえずそこは目を瞑り、抽出時の温度制御のみを目指します。
ゆくゆくはSeries 96 – Watlowみたいな多値制御のPID Controllerを使えば可能だとは思います。
RTDプローブ
本体181円、送料141円。
PT100=白金を使った高精度の温度センサ。-200℃~500℃まで計測可能。
純正サーミスタの形状と同じRTDstat($27.50)とは異なるため、取り付け方は検討の余地アリ。
SSR
2次側40Aに対応したSSR-40DA。購入時372円で送料無料。
1回路だけのシンプルなSSR。
1次側はDC3-32V、8mA-25mAで動作し、コントローラの8V/30mA駆動に合致。
配線材
配線に使うケーブルや端子もAliで買いました。
120V配線用の14AWGケーブル。
赤と黒1mペアで切り売りだったためx3購入。758円に送料が262円でした。
-65℃から200℃対応のシリコン被覆。
許容電流の表記はないものの14AWG=2sqあれば概ね15Aは流せるだろうという適当判断。
2.8/4.8/6.3mm 3サイズの平型端子のセット。
45組づつ入って371円送料無料と安い。
スイッチ端子などをハンタ付けせず配線するのに使います。
138円送料107円。
一つの端子から複数結線するのに使います。
PIDコントローラを動かす
エスプレッソマシンを壊す前に、机上で検証を行います。
コントローラに付属のアプリケーションシートから、素組してみました。
RTDは信号線を8番端子へ。残りを6,7番端子につなげます。2本リードのRTDは6,7間をジャンパでつなぐ模様。
100Vはコンセントから取ります。
初期設定
このコントローラには3つの設定モード=Codeがあります。
- Code:0089ー初期設定用
- Code:0036ー制御パラメータ変更用
- Code:0001ー利用者用
このコードが一緒なあたり、同じ外見を持った他社製品も元は一緒なのだと感じます。
”SET”を押すとコード入力になるため、0089と入れて初期設定に入ります。
設定を変えたのは2つ。
- Inty:P10.0
- Corf:0
Intyは温度センサーのタイプ。PT100のRTDは”P100”と設定する他、”P10.0”と設定すれば小数点第一位まで制御します。
Corfは華氏と摂氏の切り替え。華氏(1)がデフォなので0にします。
Endを選び、コントローラをOFF/ON。RTDが読み取った温度(PV)が表示されるようになります。
PVが現在値、SVが目標値です。
制御パラメータの変更
コントローラは産業用のため、初期のパラメータはまったく別物。
何百度もある工場機器の制御も想定されているし、センサーが何より違います。
新たに設定するにしても、ベースになる数値が欲しい。
探した所、名物おばちゃんのSeattle Coffee Gearにて、Auberのものと思われるPID Kitの動作概要説明が見つかりました。
Operating the Rancilio Silvia after PID kit modification Version 4
それによると
「多くのユーザーにはカスタマイズの必要は無い。ただし、新品とメンテの行き届いてない旧モデルでは差が出る。そのためチューニングのヒントがある」
としています。
そこで紹介されていたKITのデフォルトパラメータがこちら。
Code | 0036 | 0001 | 0089 | ||||
Function | P | I | d | SV | AH1 | AL1 | Corf |
Parameter | 2 | 60 | 15 | 105 | 175 | 160 | 0 |
Code:0036に入り、P,I,Dをそれぞれ上記に設定しました。
PIDについて
このP,I,DはまさしくPID制御のパラメータのことで、詳しくは制御工学を・・・。
さしあたり、KITメーカーがひたすらテストした結果、抽出温度に対し以下の効果が現れた様です。
- P:加算 ー 低いほどショット後の温度回復が早くなる。ただし、その分温度が変動しやすくなる。RTDセンサー使用時のP値は概ね1.8~2.5の間が良い。
- I:積分 ー 短くすると性能が向上する場合あり。ただし、温度が(SVに対し)振動しやすくなる。逆にIが長すぎると回復速度が遅くなる。
- D:微分 ー 記載なし
Dの事は書いていませんが、おそらく短くするほど温度修正が強く入り、修正を早めますが安定性を下げるでしょう。
たぶん「おいしいエスプレッソに対する最適なPIDの値」には終わりのないカット&トライが必要です。
ただし、制御上の最適値を出すAuto Tuning機能がついているので、装置に組み付けたら試してみようと思います。
実際に動かしてみた
設定が終わった所で、制御を確認しておきます。
Code:0001に入り、SVを30.0に設定。
室温は24℃くらいなのでPV<SVとなり、コントローラのOUT LEDが常時点灯しました。SSRのインジケータも光ってます。
実際に取り付けたらこの時ボイラーはONになるでしょう。
次にRTDを手で握るとPVがどんどん上昇。
30℃を超えた所で、OUT LEDが点滅を始めました。PV>SVとなったため制御が変わった様です。
てっきり完全にOFFになるかと思ったけど、自然冷却を考慮して細かくONし続けるのかな?
GW中に実装予定
とりあえず、PID Controlの基本形は大丈夫そう。
GW中にSilviaを分解して組み付けてみるつもり。
ただ肝心の制御モードがデフォルトの”2”でいいか確証が持てない・・・。
追加調査を続けようと思います。
2021/04/30 追記
Operating the Rancilio Silvia after PID kit modification Version 1.1によると、出荷キットの制御モード(Outy)は”3″とのこと。
これにするとSVを堺に完全にOFFとONが切り替わるとなる、シンプルな制御となりました。
ただし、活発な論議が行われているPID on Silvia – Rancilio Silvia Forum – Coffee Forums UKでは”2″について書かれています。多くの動画で細かくヒーティングランプが点滅しているのはこの”2″によるものでしょう。