スマホ付属の一般的イヤホンは、片耳にダイナミック型のユニットが一つ入っています(1DD)。
1万円超の中級イヤホンは、中高域に優れたバランスド・アーマチュア型のユニットが一つ入っています(1BA)。
ではこれらを片耳に2個づつ、計4個詰め込んだら最高級で最高音質なのでは?
そんな圧倒的物量作戦を約5,000円で実現してしまっているのがKZ(Knowledge Zenith)社のZC6。中華イヤホンながら安く評判がいいので自分もお試ししてみました。
装着感は調整次第で変わる
前に紹介したQCY Q29 Proとは正反対の、ゴツゴツしたボディ。厚みもあります。複数のユニットを収めるため割りと大柄な点は高級イヤーモニターと似たところ。
見た目通りというか実際装着してみるとずれやすい。数分歩く間に何度か直す必要があります。
色々試すと、どうやら原因は標準のイヤーピースにあったようです。
傘の部分の「たけ」が高く硬めのため、自分の耳穴にすっぽりと収まってくれません。そのせいでボディが浮き、振動の度にグラグラしていたようです。
これは背の低いスパイラルドットのMLに交換したところ、外耳とボディが密着しフィットした状態を保ち続けられるようになりました。
また、添付ケーブルの耳に当たる部分は針金を熱収縮チューブで包んだ形状になっています。ある程度クセをつけられるため、ググッと曲げて耳に巻きつける事でホールドはかなり改善しました。
ただやっぱり大きくゴツゴツとしたボディは、長く装着していると一部が耳に当たって痛くなりました。
近頃のコンパクトなイヤホンよりも装着感を意識させられる事になるでしょう。
他の5,000円クラスを突き放す音
微細な記録も拾い上げる
標準イヤーピースで聞く限り、このイヤホンの高域は解像度が高く、過敏ともいえる鳴り方をします。僅かに記録された音でも拾い上げ、耳に届けます。オーケストラの譜面をめくる音まで。
これまで気にらなかったJPT1もサーーッっというホワイトノイズが気になりました。圧縮音源を無線伝送した場合の高域のゆらぎが目立つ、まるで拡大鏡みたいな高域です。
高品質なソースではアンダー1万円クラスとしては驚きの高解像度を味わえますし、動画から抜いたような低品質ソースでは耳に刺さるトゲトゲしい高域となり、今まで平気だったものが気になり楽しめないかもしれません。
女性Voにマッチ
女性Voの音域に注目すると、声の艶やかさや息遣いを再現できています。曇りもなく定位感もしっかり。リファレンスとしているボサノヴァのアルバム、Morelenbaum² / Sakamotoではチェロの響胴の響きまでを感じる事ができ、自分の中での一定ラインはクリアしています。
低域はやや誇張気味
低域の強さは好き好きの別れるところですが、自分はやや誇張気味と感じました。ブーミーとまではいかないけれど、高域とくらべて随分やわらかく、膨らんだ音。少なくとも不足していると感じる事は無いでしょう。
価格以上の価値はあるが問題はバランス
約5,000円とは思えない際立った音質のZS6。
他のサイトのレビューを見ると否定するのに勇気が要りますが、自分は
「各レンジで突出した音を出すが全体のバランスが今ひとつ」
と評価しました。
もともと低域の少ないクラシックやアコースティックなソースなら、緻密で明瞭に描かれる中高域をクラスを超えて楽しめると思います。しかしそれに低音が常に入るポップスなどでは一点。その高域に長大な低域が加わり、結構なドンシャリ傾向に聴こえました。なんだろう。ハイパワーな高回転エンジンをトラックのフレームに載せたような、カスタムショップのレースマシン、みたいなアンバランスさ、荒々しさを感じます。車好きじゃない人には全然伝わらないたとえ。
聞いた瞬間のインパクトが凄くて「うお!」と思うけど長く聴いてると疲れてくる。そんな音です。
以上は我が家のJPT1と安物USB DACで聞いた感想。
あなたのソース、使っている機材では化けるかも??
マイクの有無があるようなので、飛んだ先でチェックをわすれずに。