実際にはUSBケーブルを無くすことはできませんが、ケーブルがもたらす悪影響を大幅に減らせそうな「USBアイソレータ」。今回はこれを自作して、ノイズの固まりであるPCからUSB DACを切り離そうと思い立ちました。学生の頃から夢だったアンナミラーズで。
ノイズはUSBを渡ってやってくる
高電流、高回転が渦巻くPCからデータを貰うPCオーディオ。ここからデータをもらう以上、橋渡しをするUSBケーブルやLANケーブルにもデータと合わせてノイズなど様々な信号が流れます。そのため「オーディオ用高級USBケーブル」や「オーディオ用高級LANケーブル」なんて商品ジャンルが築き上げられました。
インターフェイスに詳しいIT系からは「原理を考えれば音質が変わるはずがない」とか「オーディオは宗教」と揶揄され、オーディオマニアからは「だって音が変わるのは事実なんだから」となんとも暖簾に腕押しな反論が繰り返されています。
それなら、PCとDACを電気的に分断してしまえばいいじゃない。というのがUSBアイソレータの着眼点。Analog Device ADuM4160という内部にフォトカプラが入った様なICを使い、INのUSB信号を見ながら、それと同じ信号を作り直してUSBのOUTに出します。殴り書かれた手書きのノートを、Wordで清書するようなイメージでしょうか(たとえが間違ってたら教えて下さい)。
市販のUSBアイソレータの相場は\10,000~50,000ほど。今回は自作をして約\2,500で完成しました。まったく同じ性能とはいかないでしょうが、高負荷時のPCから廻ってくる「ジジジジッ」というノイズをカットできれば御の字とします。
制作にはADuM4160を使ったUSBアイソレータ。 桐井研究室の回路図とパーツリストを参考にさせていただきました。ありがとうございました。
Key Component
Analog DeviceのADuM4160とムラタのEMIフィルタ BNX-002。ADuM4160は秋葉原では若松通商くらいにしか無いらしく、\889で購入。高いけどまあニッチな商品ですものねと。袋にはADuM1100BRZと書いてますが別物。
EMIフィルタは秋月で\300。マルツより3割ほど安いです。後ろのSOIC→DIP変換基板も秋月にて\80。他店では3枚で\370とかするのでやはり秋月最安伝説なのか。
あとの部品は桐井研究室さんのページを参考に。
回路図番号 | 個数 | 備考 |
U1 | 1 | ADuM4160 (USBアイソレータ) |
U2 | 1 | 7805 5V 三端子レギュレータ |
D1 | 1 | 1N4148 |
LED | 2 | IN側とOUT側用。消費の多い物は避ける |
C1 | 1 | 電解コンデンサ 100uF/16V以上(OSコン) |
C2-3, C5-6 | 4 | 小型のフィルムコンデンサ 0.1uF |
C4 | 1 | 電解コンデンサ 100uF/10V以上(OSコン) |
C8-11 | 4 | 積セラ 0.1uF |
C7 | 1 | 電解コンデンサ 10uF/6.3V |
R1, 7 | 2 | 3kΩ (LED用) カーボンでOK |
R2-5 | 4 | 25Ω 1%品,無ければ22Ω5% |
R6 | 1 | 5.6Ω カーボンでOK |
FIL | 1 | DCラインフィルタ BNX-002 |
一つポイント。C8~11の4個の0.1uFコンデンサはリード式ではなく低ESRのチップコンである必要があります。なぜならApplication Noteに「トータルの配線長が10mm以下でなくてはならない」と書いてあるため。
自分は途中から気づいた為にこんな形になってしまいました。とりあえず10mmは守ってる。0.1uFのチップCはよく使われるのでまとめて買っておいてもいいかも。
いきなり完成
他には気になる所も無いのでそのまま完成。屈辱のジャンパーを3本も飛ばしてしまいました。悔しいです!(‘瓜`)
DIP変換基板もいいですが、桐井研究室さんの様に1.27mmピッチの両面基盤を使った方がコンパクトに仕上げられそうです。あと秋月のコネクタ→2.54mm変換基板には助けられてます。安いし楽だし。ケミコンは気を遣ってOSコンにでもすれば良かったか・・・
裏面からみたところ。緑がIC部分。赤いゾーンがPCから来たUSB信号を受けるゾーン。青い部分が+5Vの電源回路とDACに渡すUSB信号を作るゾーン。パターンを見ての通り、PC側とDAC側は電気的に繋がっていません。
視聴
こんな感じで接続しました。ACアダプタをつなげると右の、USBをつなげると左のLEDが昼行灯みたいに光ります。線が細いのはケーブルの太さが、音質の決定的差でない事を教えてやる!というアピールではなく、単にラッピングワイヤーしか持ってなかった為。
音楽再生をしながら高負荷をかけてみましたが、今のところPCの動作に合わせてノイズが流れ込む事は無くなった様です。直結してしまったので細かく聞き比べはできませんが、Q701 | AKG by HARMANと合わせて効くと「高域の細かくハキハキした音」になりました。これは私の好みの音。今回の回路は三端子レギュレータが作った綺麗な電源をUSBに流す為、PCM2704みたいなパスパワーUSB DACにはより効果が高いんじゃないでしょうか。
今後は本格的に使うべく「メタルケースへの格納」と「コネクタをパスする直結ケーブルの作成」をしたいと思います。
ちなみにマリー・アントワネット – Wikipediaによると「パンが無いのなら~」の有名フレーズはマリー本人の言葉では無いんだとか。