MiniITXに最高のグラフィックを届けるRADEON R9 NANOカードをレビュー

MiniITXに最高のグラフィックを届けるRADEON R9 NANOカードをレビュー

2回目はいよいよRADEON R9 NANOの使い心地をレビューしていきたいと思います。

といってもR9 NANOも発売から少し経っている為、「3DMarkにてベンチマークスコアが○○○」というのは大手サイトをご参照下さい。自分は「今の環境(NVIDAの3年前のミッドレンジモデル)から買い換える価値を感じるか?」について書きたいとおもいます。

GTX670 VS R9 NANO

ご参照下さい、といっても面倒なので有名なguru3d.comによる3DMark結果を引用します。

AMD Radeon R9 NANO review – DX11: 3DMark 2013


グラフにGTX670はありませんがGTX760とほぼ同性能と多くのサイトで書かれています。すなわちR9 Nanoは3DMarkにおいてGTX670の2.26倍の性能を持っていると言えるでしょう。

そしてスペックシートも確認してみます。
コンパクトPC向けグラボとしてはライバルともいえる基板長170mmのGIGABYTE – GV-N970IX-4GDも載せておきます。

AMD
Radeon
R9 Nano
NVIDIA
GTX 670
Gigabyte
GTX 970
Mini
チップコードネームFijiGK104GM204
シェーダープロセッサ数4096基1344基1664基
ROP数64基32基56基
メモリインターフェイス4096bit256bit256bit
コアクロックUp to 1000MHzUp To 980MHzUp to 1178MHz
メモリバス帯域幅512GB/s192.26GB/s224GB/s
トランジスタ数89億個35億個52億個

NANOのHBMはクロックが500MHzほどしかないそうですが、4096bitという桁外れなメモリインターフェイスにより秒間512GBという圧倒的な帯域幅を誇ります。他のシェーダープロセッサからトランジスタ数に至るまでほとんどはGTX670の2~2.5倍といったところ。

RADEONの付属ソフト

NVIDIAに2種類のツールがあるように、RADEON純正でも2つのツールが提供されています。

AMD Settings

シンプルな情報表示&設定ツール。20160105-02今風のフラットデザインを取り入れてあります。
一般的なズラズラと書かれたプロパティよりも値が見やすくていいですね。

AMD Gaming Evolved

NVIDIAのGeForce Experienceに相当する遊びの為のフロントエンド、といった役目のツールがこちら。

20160105-01

  • ドライバの更新チェック&アップデート
  • インストール済みゲームの検出&カスタムセットアップ
  • 動画の録画&シェア(Plays.tv利用)
  • ゲーム画面のブロードキャスト(Twitch利用)
  • SNS的なコミュニティ機能

などの機能がありGeForce Experienceと似ているなーと思った中、目に止まったのが「ブロードキャスト」。このツールだけで直接Twitchにゲーム動画を配信できます。これは面白そう!と試したわけですが、自分は結果的にうまく動きませんでした。「ブロードキャストを準備中」とは出るものの、なかなか送信が始まってくれない。

結局一度も配信できないままカードの貸出を終えて返却してしまったのですが、GTX670に戻したらこのGaming Evolvedだけが残ってしまい、しかもTwitchまで動いてしまいました。一体何が悪かったのか・・・。Gaming Evolvedはインストール一覧には出てこないので、アンインストールしたい時は「Raptor」と書かれたアプリを削除します。

消費電力と温度のグラフ

プレイ時間の長いPCゲーマーとしては消費電力も注目したいところ。

そこで1秒毎のPCの消費電力を記録できるようRaspberry Piで電力ロガー作成しました(ロガーについては別記事参照→2ch A/D コンバータ MPC3002とRaspberry Piで消費電力ロガー | 徒労日記)。それと並行してHWiNFOでPC内部の測定も行っています。グラフはどちらのグラボも4つのパラメータを10分間計測したところでプロットしました。

  • 青:CPU負荷率(左軸:100%が最大)
  • 赤:CPU温度(左軸:100℃が最大)
  • 黄:GPU温度(左軸:100℃が最大)
  • 緑:PCのトータル消費電力(右軸:300Wが最大)

測定はPCを起動し、落ち着いた状態からスタート。DiRT Rallyを起動しすぐにベンチマークモードにて約して約5分ベンチ。その後は実際にゲームプレイ・・・といった内容。

ざっとPCのスペックも書いておきます。

まずはGTX670から。ベンチマークモードの開始は20:57

20160105-03

続いてR9 NANO。ベンチマークモードの開始は20:3820160105-04

観点は黄色と緑の2本。

黄色:GPU温度

R9 NANOは74℃まで上昇した所で安定。この時GPUFANはMaxの46%(デューティー比)、2388rpmで回転していました。対してGTX670は83℃まで上昇し、GPUFANはMaxの63%(回転数は検出できず)

R9 NANOのファンはこの時でも「まあ五月蝿いかなぁ?」といった程度の音。ただしファン自体の音が高めなのと電源部からの振動音がちょっとあります。対してGTX670は低めの音ながら爆音のレベル。PCを横においていたら「うるせーー!!!」って思うほど。普段は水冷化しているので気になりませんが、GTX670の騒音は静音ケースなどにしまい込まない限り我慢なりません。

緑:PC消費電力

グラボ以外は同じパーツ構成でしたが、R9 NANOがGTX670に対して60-70W高いという結果になりました。サイズはNANOですが、消費電力はGTX980に負けていないようです。

実際に遊んでみよう

計測はこれくらいにして最後は好きに遊んじゃいます。

MMD

自分で作る4K動画。MMDのムービーをYouTubeに投稿するテスト | 徒労日記にも書いたとおり、フィルタかけまくり+解像度を上げればMikuMikuDanceといえど激重。

20160105-05

これの描画が速くなれば嬉しい!と思ったものの、劇的には向上せず。

ノーフィルタでは260fps(FullHD)を超えたりとパワーを見せてくれましたが、DiffusionやDOF、ExcellentShadowなどのヘビー級フィルタを重ねるとGTX670と同程度まで落ち込むという結果に。

ブレイドアンドソウル

これが今一番プレイしているPCゲーム

20160105-06

これも一番変わって欲しかった「侵食された黒唱族のカイラム」や「破壊された江流都の蝎魔幻獣やタラカン」ではfpsが10程度まで低下し、いつもどおり他のプレイヤーを消すなどの軽減処理が必要になりました。
この時のメモリ使用量(GPU D3D Memory Dedicated)はMax3067MBと搭載メモリ4GBに対してまだ余裕があり、別な所に問題がある事がわかりました(GTX670はMax1997MBと搭載2GBに対して既にカツカツ)

MMDと同じようにDirectx 9.0世代のゲームの為、DX11ネイティブの効果より単なるGPUパワー勝負になると踏んだのですが、アテが外れた様な結果です。
あとはGTX670では激重でゲームにならなくなる「ハードウェアによる全シーンアンチエイリアス」を試してみたかったなー。タイムアップで出来ませんでしたが、こういった処理では強さを発揮できるかもしれません。

DiRT RALLY

必要最低環境で既に “DirectX 11 graphics card required”と書かれているDiRT Rallyをプレイ。解像度はFullHD,クオリティはUltra,AAはMSAAx4にしています。

まずはGTX670

20160105-07

次にR9 NANO

20160105-08

見事ダブルスコアを出してR9 NANOが圧勝。
平均して100fpsで描画できているため、これなら4Kディスプレイと組み合わせてもいけそう、という期待をさせてくれます。

はたして買いなのか?

最後に冒頭にも書いた「取り替える価値を感じるか?」について考えてみます

(ここで目を閉じ腕組み1分)

「お金に糸目をつけずにミニPCで最高のゲームをしたかったらコレしかない」

アレコレ書く前に一言でまとめるとこうなります。

・・・

RADEON R9 NANOはなにせ高い。「コンパクトなグラボ=ロースペック」という固定観念もあり96,800 円(2016年1月9日現在)という価格はあまりにも高額です。
ただし世の中には15万円もするGeForce Titan GTXを2本3本と買っていく購買層もあるという。そういった人たちがMini-ITXでマシンを組みたい!といったらR9 NANOはNVIDIA勢を抑えて唯一の選択肢です。だってこれしかないんだもん、と胸はって言えるサイズとスペックです。

妥協を排し、最高のMini-ITXマシンを作ってやるぞ!というあなたは是非PC4Uさんでお願いします。

20160104-08

それが自分に照らし合わせてみると、DirectX9世代のゲームやツールに傾倒しているため10万という投資に対してはどうにも咬み合わないな、と思ってしまいます。最近話題のBethsoft.com – Game Detail – Fallout 4にドップリ浸かりたい!とかケースをLianLiのPC-Q33にしたからスペースがない!とかそういう状況になれば意識も変わってくるかもしれませんが。

今後HBMが増産され、歩留まりが向上した第二、第三世代カードが出てくれば同様の恩恵がより低価格に自分の手元に届く日が来るかもしれません。なので今はプレゼントでもされないかぎりしばらくGTX670かなぁ。

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